交通事故事件の処理に必要となる各種書類について


事故の発生状況に関するもの

交通事故証明書
交通事故証明書は交通事故が発生したことを発生日時、発生場所、事故当事者の住所、氏名、事故類型などによって特定・証明するための公的な証明書であり、損害賠償請求を行う際には必ず必要となる重要な資料です。
大体、事故発生を警察に届けてから2週間〜1ヶ月程度で申請が可能となり、警察署や交番に備え付けの申請用紙で請求することとなります。
なお、交通事故証明書では、通常、過失のより大きいと考えられる当事者が「甲」欄、その相手方が「乙」欄に記載されることが多いようですが、原則として当事者の過失の軽重や事故の詳しい状況を証明するものではありません。
②実況見分調書
事故後、現場に到着した警察官が当事者、関係者(目撃者など)から事故の状況を聴取することを実況見分(じっきょうけんぶん)といい、その結果を記載したものが実況見分調書になります。
実際の交通事故の裁判や示談交渉では、事故の状況を確定するための資料として、警察の作成する実況見分調書の内容が極めて重要視されているのが現状です。ところが、残念ながら、当事者の不明確な説明や警察官の不十分な聞き取り等のため、実際の事故の状況が正しく記載されていない実況見分調書が作成されているケースも見受けられます。
そのため、現場での警察官からの聴取については、納得いくまで十分に説明を行い、間違った内容の調書が作成された場合にはその訂正を求めることなども必要になります。
③事故発生状況報告書
事故の当事者(被害者・加害者等)が、事故の発生状況を当事者名や速度、道路状況、略図、文章等で説明するために作成する報告書で、自賠責保険会社や任意保険会社に保険金の請求を行う際には交通事故証明書と一緒に提出することが必要になります(各保険会社の保険金請求のための資料に報告書の用紙が含まれています。)。
この報告書は、交通事故証明書と異なり、ある程度詳しい事故の状況を記載することとなるので、加害者・被害者それぞれの過失の有無や程度を判断するための資料となります。

損害賠償の内容に関するもの

①診断書・診療報酬明細書
事故によるケガの治療のために医療機関を受診された際には、その怪我の程度や治療内容、入通院の状況を立証する資料として診断書・診療報酬明細書が必要となります。
これらの資料は、医療機関を受診される際に、交通事故によるケガであることを伝え、自賠責保険用の統一書式のものを医療機関に発行してもらうこととなりますが、加害者が損害保険会社に加入している場合には、医療機関からの請求と診断書・診療報酬明細書の発行、支払い手続を保険会社が行うことが一般的です。
②通院交通費明細書
医療機関への通院のために支払った交通費を請求する際に必要となる資料であり、被害者の側で通院日、通院区間、利用した交通機関や金額などを記入して作成する必要があります。
なお、この明細書の用紙も各保険会社の保険金請求のための資料に含まれています。
③後遺障害診断書
事故で負ったケガが完治せず後遺障害が残ることが見込まれるような場合には、医療機関で「後遺障害診断書」を作成してもらい、それそ自賠責保険ないし労災保険といった認定機関に提出して「後遺障害等級認定」を行ってもらう必要があります。
後遺障害診断書は後遺障害の程度・内容を判断するための重要な資料となりますので、主治医の先生には出来る限り詳細に不足なく記載してもらうことが大切です。
なお、後遺障害診断書はあくまでも認定機関の等級認定の資料となる症状を記載してもらうものであり、診断書自体には「後遺障害○○級」といった具体的な等級が記載されることはありません。
④後遺障害等級認定票
後遺障害等級認定申請がなされた場合に、その認定結果を記載したものが後遺障害等級認定票です。この認定票は自賠責保険や労災保険といった認定機関が作成し、申請者等に送付します(もっとも「後遺障害等級認定結果のご通知」など、その名称はまちまちです。)。
この認定票には、被害者のどのような症状がどのような後遺障害(等級)に該当すると判断したのかが詳細に記載されています(また、後遺障害は残っていないと判断される場合には「非該当」と記載されます。)。
この後遺障害等級認定票は、被害者の後遺障害が何等級に該当するのかを示す資料として非常に重要なものとなります。
⑤休業損害証明書・源泉徴収票、賞与減額証明書
被害者が事故のケガのため仕事を休んだ際には、休業によって収入が得られなかった分を「休業損害」として請求することとなります。この際に必要となるのが休業損害証明書であり、勤務している会社に依頼して作成してもらい、事故前の源泉徴収票と一緒に自賠責保険会社等に提出することとなります。
また、休業が長期になり、その結果ボーナスが減額されてしまったという場合には、会社に「賞与減額証明書」を作成してもらい、事故による休業のために減ってしまった賞与も請求することが必要になります。
⑥各種意見書
特別な損害を請求する場合には、そのような支出が必要であったことを示す専門家の意見書を作ってもらう必要があります。
例えば、「入院の際、ケガの内容や治療上の必要から個室を利用しないといけなくなった」(個室利用料の場合)、「入通院の際、家族の介助・付添が必要だった」(付添看護費の場合)、「ケガのためコルセットなどの装具を購入する必要があった」(装具購入費用の場合)などの場合、それぞれの費用を請求するためにはそのような必要があったことについて担当医師の意見書を作成してもらう必要があります。
また、認定機関に後遺障害の内容を正しく把握してもらい適切な等級認定をしてもらうために、ケガの内容や症状の程度について、診断書とは別により詳細・具体的な担当医師の意見書を作成してもらう場合もあります。
⑦その他各種領収証等
事故が発生した場合、被害者の側でも種々の支払いが必要になることが多く、これらを後でまとめて加害者側に請求する必要があります。そして、そのためには領収書、金融機関の払込取扱票などといった、支払いをしたことの資料を残しておかなければなりません。
例えば、タクシーを利用した場合、薬局でケガの治療のための薬を購入した場合、事故で壊れた車やバイクの修理費用・レッカー代を支払った場合などです。
また、事故で持っていた物品が壊れた場合には、その価格を裏付けるため、その物品を購入した際の領収書等が必要になる場合もあります。
そのため、事故を原因として何らかの支払いを行う場合には必ず領収書等の資料を保管しておくことが重要です。
場合によっては、領収書を発行してもらうことが難しい場合もありますが(医師への謝礼や電車・バスの利用料など)、この場合には被害者の側でノート等に支払った日付や金額、支払先などをその都度メモしておくことが大切です。
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