交通事故の後の人身事故の届出

交通事故の後、警察に人身事故の届出をしていないと人身損害の賠償を請求することはできないのでしょうか?
いいえ。

人身事故の届出をしていなくても、人身損害の賠償を請求することは可能です。

交通事故に基づく損害賠償の請求は、自賠法3条又は民法上の不法行為の要件(法律上必要とされる事実。平たく言えば、「他人の不注意な運転によって損害を被ったこと」)を満たせば、行うことができます。これに対して、警察に人身事故の届出をしていることは要件ではありませんので、これがなくても損害賠償請求を行うことは可能です。

また、任意保険において、人身傷害保険金の支払いを請求する場合でも、通常、「人身事故証明書入手不能理由書」を記載・提出すれば、人身事故の届出や証明書がなくても請求が可能です。

もっとも、人身事故の届出をすることにより、以下のようなメリットもあります。警察に人身事故の届出をすれば、警察は刑事事件として事故の捜査を行い、「実況見分調書」という資料を作成します。

これは、事故直後に、警察官が、当事者の立会いのもと事故状況について調査を行い、その結果を記録・報告するものです。この調書は、事故直後に、警察という公的機関が作成したものという点から、事故状況を客観的に示すものとして有力な証拠になります。

これに対して、物件事故の場合には、「物件事故報告書」という比較的簡略な報告書が作成されるのみです。

このように、事故が人身事故として扱われるか物件事故として扱われるかは、警察による捜査方法や作成される資料が異なるという違いがあります。

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